更新日: 2011-12-29 09:07:56

震災復興住宅モデルハウス(案)

著者: psytex

編集者: psytex

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はじめに

Photo by psytex

震災の後には「仮設住宅」、というのがお決まり
だが、それって二度手間じゃないの?
もっと早く、本格的で災害対策も充分な住宅は
できないのか・・・・その一案を提供する。

STEP1

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 震災といえば、まず迅速に建てられる「仮設住宅」を建て、次に「復興住宅」を建て、生活が落ち着いたら自分の望みの家を建てて出て行く、というのが定番だが、そうした「仮設住宅」は役目が終わった後は、解体され保管されるが、その手間や保管料もバカにならない。
迅速に建てられ、永続的に住め、災害にも強い建物があれば、そのような三段階のコストを省略でき、多少のコスト高は許されるだろう。
 地震・津波・火災に耐え、放射能も遮蔽する、そんな「スーパー防災住宅」のプランを示したい。

 その基本仕様は以下のようになる;
1.鉄筋コンクリート壁式構造
2.打ち込み外断熱乾式外装
3.ソーラー床暖房躯体蓄熱
4.オプション1:外付け二重サッシ鉛ガラス
5.オプション2:地下自然熱利用

1.鉄筋コンクリート壁式構造:
 本来、鉄筋コンクリート造(RC造)は高価であるが(木造が30~40万/坪のところ80~100万/坪)、それは主にラーメン構造(柱・梁でフレームを組む)の複雑な型枠工事による。
 同じRC造でも、壁を少し厚くすることで構造体とした「壁式構造」であれば、型枠の形状はシンプルになってコストダウンできる上、面で構成された躯体は地震や火事に強く、放射線の遮蔽能力も高い、今回の震災の復興に最適の構造となる。

 壁式構造は型枠の形状が単純なので、最近は、既成のくり返し使えるFRP型枠(添付画像)を使い、反対側の型枠を断熱材にすることで断熱性能を高めながら、工期を短縮できる工法がある(この手のFRP型枠を持つ建設会社は全国数十社)。
この「工期短縮」効果によって、RC造でありながら3階建てで2.5~3ヶ月と、木造並みの工期で建てられる。
 人件費の高い日本において、工期短縮は大きなコスト削減につながり、内断熱で60万前後/坪、外断熱で70万前後/坪という実績になっている(私の関係している都内の現場で)。
ただし既成の型枠なのでデザイン的に自由度が低く、マッチ箱のようになるという難点はある。

 特に、FRP型枠は組み立てが簡単で、数戸を同時に建てた時に最も効率よく施工できるので、復興住宅のように同時に複数を建てられる時に、一層の工期短縮と同時に更なるコストダウンが可能になる。
 この剛健な壁式RC造の3階建て(高さ10m)が道路沿いに一列に並べば、それより内側の住宅を守る防波堤にもなろう。

STEP2 2.外断熱躯体蓄熱:

Photo by psytex

 1において、FRP型枠の反対の型枠を断熱材にすることができると書いたが、その断熱材を内側に使う(内断熱)か、外側に使う(外断熱)かで、躯体自身のコストアップはない。
先ほど「内断熱で60万、外断熱で70万」と書いた違いは、内断熱の場合はコンクリート打ち放しで済んだ外装が、外断熱では断熱材そのままという訳にはいかず、それなりの外装材が必要になるからだ(内断の場合は内側の断熱材の表面に下地ボードを貼り合せたものを使って、安価なクロス張りで済む)。
 ところが内断熱においては、床のコンクリートスラブが、外壁のコンクリートに接続した部分で壁の断熱材が途切れ、大きな熱橋(熱の逃げるルート)ができてしまっており、寒冷地では床のフローリングの外周部が黒ずんでくるというクレームが多い(結露)。
その「熱橋」をふさぐには、コンクリート躯体の外側の型枠を断熱材にするのが一番なのだ。

 そう思って設計した外断住宅の外装が落ちた時(添付画像)には、ショックだった。
結論的に言えば、断熱材というのは水蒸気を通し、外断熱によって室内側の温度になったコンクリート躯体から発生した水蒸気が、外装の裏まで到達して冷やされ、結露(凍結?)したのだ。
 世間を見ると、確かに「通気外断熱」とかいって、断熱材の裏側に外気を通している工法があり、同じ失敗をしたらしい痕跡はうかがえる(でも「断熱材の裏に外気を通し」たんじゃ、断熱材の意味がない)。
いまだに「断熱材の外側にじかに湿式(塗装やモルタル)仕上げ」の外断熱仕様が出回っているが、寒冷地での採用にはご用心願いたい。
 外断熱の外側には、下地桟を介した乾式(角波鋼板やセメント板サイディング)仕上げによって、通気層をとるのが原則である。

3.ソーラー床暖房躯体蓄熱
 今回の震災で広範なダメージを負ったのが、停電である。
最低限の生活を可能にする照明を確保できる、バッテリー付きのソーラーシステムを設置すると共に、先の外断熱の床にフローリングタイプの電熱ヒーターを敷けば、熱伝導率が高くて熱容量の大きいコンクリート躯体に、自然に熱が蓄えられ(躯体蓄熱)、電源を切っても数日は暖かく、外気温に下がるまで2~3ヶ月かかるという実験結果が、NEDO助成による北大の試験によって得られている。

 この「壁まで暖まる」ということは、暖房のない廊下やトイレまで同じ温度になり、高齢者の最大の死因であるヒートショック(急に寒い所に出る)を防ぐ「温熱バリアフリー」となり、高齢化の進む東北地方には望ましいものとなる。

STEP3 4.オプション1:外付け二重サッシ鉛ガラス

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 特に今回の被災地域に限って言えば、この「コンクリートの壁」は、非常に重要な価値がある。
病院などで放射線を扱う区画は、他が鉄骨造でもそこだけRC造にするほど、コンクリートは放射線の遮蔽力に優れている(原子炉が厚いコンクリートで囲われているのもそのため)。
 放射線を遮蔽する能力は、放射線遮蔽に最も優れた鉛の厚みに換算して、「Xミリ当量(鉛板Xmmに匹敵する遮蔽力)」という表現をされるが、壁式RC造の標準的な壁厚18センチは、2~3ミリ当量(2~3mmの鉛板)もあり、CTスキャナーなど放射線の強い設備でも通用する仕様となる。

 ただし、窓やドアは放射線を素通しなので、放射線対策をメインに考えるなら、窓はできるだけ少なめにし(断熱的にも有利)、さらには玄関ドアには鉛板を張り、窓にも鉛ガラスを入れ、換気口には高性能防塵フィルター付きにするなどのオプションが考えられる。
 また、鉛ガラスのペアガラスはないので、断熱性を考えると二重サッシになるが、そこにおいて外側のサッシを外付けにすれば、コンクリート躯体の小口(断面)が外気に触れる=熱橋となって結露することを避ける意味でも有効である。

5.オプションオプション2:地下自然熱利用
 地下4メートル以下になると、年間を通じて10数度で一定の温度が保たれている(別添表)。
これは、井戸水は冬暖かく夏冷たく感じたり、洞窟に入った時の感じからも理解されよう。
 先ほど2で「外断熱躯体蓄熱」と言ったが、その外断熱を地下室(地下3~4m)の外壁まで立ち下げ、基礎下の断熱材を無くせば、その地下の「一定の温度」が、熱伝導率の高いコンクリート躯体を伝わって建物全体に伝わり、自然熱による無エネルギー住宅(当然、震災にも強い)が可能になる・・・・はずである。
 実は、これは私が大学で夢見た建築なのだが、地下室というのは掘削の工事費、漏水のリスク(地下水位が高いとできない)などがあって、なかなか実現できないでいるものなので、実際に建てて何かトラブっても保証の限りではありません(-人-)
(これをもって「公知の事実」となったので、特許出願してもボツになる)

 おそらくこれが、現代日本の建設技術の粋(ただし経済的に可能な)を集めた、理想の防災住宅であろう。
問題は、コストダウンしたとはいえ、木造の倍の坪単価である点であろう。
 政府の助成や、耐用年数の長さを生かした長期ローン(現在の住宅ローンは木造の耐用年数に合わせた35年)、資産価値の目減りの少なさを生かしたモーゲージローン(建物自身を担保に建設費を借りる)といった、新たな枠組みが期待される。

まとめ

メールで問合せがあったので、ここでお答えしておきます。
ここで触れている「壁式鉄筋コンクリート造=WRC造」と、今、被災地で着工数を伸ばしているらしい「WPC造=壁式プレキャストコンクリート造(大成パルコンやレスコハウス)」はどう違うか、という内容でした。

1.「プレキャスト」とは、工場で鉄筋コンクリートパネルを造り、それを現場でボルトでつないだり、ジョイントの所に鉄筋を差してモルタルを注入したりして一体化したものです。

2.これは、建築基準法上の「壁式鉄筋コンクリート造」ではなく、実験などを経て個別に国交省の認定を取得したもので、その結果として、汎用性があるゆえに余力のあった壁式鉄筋コンクリート造のメリットは失われています。

3.本来、壁式鉄筋コンクリート造は現場でコンクリートを打設するために建物全体が同じ強度で箱状の構造体を形成するところ、プレキャスト工法では、鉄筋コンクリートのパネルをつなぐのは点々と締められたボルトだけで、ジョイントに差す鉄筋はすき間をふさぐ目的であり、完全な「一体の構造」ではありません。

4.また、個別に型式認定を取ったために、ギリギリまで壁を薄くでき、本サイトで取り上げた壁式鉄筋コンクリート造だと18cmある壁厚が、10~12cmほどしかありません。
鉄筋がパネル毎に途切れている上に、壁も薄いのですから、もはや壁式鉄筋コンクリート造と同列に語れる構造ではなくなっています。

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ブータンに3年、ケニアに2年、ソロモン諸島に1年半など、アフリカ、アジア、南太平洋を中心に、のべ8年の海外暮らしをしました。
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