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【ベントレーの車検代はいくらかかる? 第3話】「ベントレーの車検は3ケタ万円」のウソ! ホント? 2018年05月16日 17:33

○お金をかけるところ、かけないところ
今回の車検についての私のスタンスは、まず第一に車検を通すこと、すなわち法規対応をするということです。逆に言えば、法規対応から遠い部分、例えば、内外装のリペアやオーディオ関連などについては特に手を入れることは考えていませんでした。微妙なのは機関系や電装系など、一見してわからない部分です。また、1年間非走行ということもあり、タイヤの変形やブッシュ類の劣化なども懸念していました。2300kgを超える巨体ですから、そうした部分への負担は小さくありません。エンジンオイルとバッテリーについては、元々が自分の手によって選んだものではなかったこともあり、この機会に最適なものに変更してもらうよう依頼しました。他の部分についても同様ですが、重要なのは「最適かどうか」であり、費用は二の次でかまわないと伝えました。

私は技術系の人間ではないので、詳細について語ることはできませんが、私の理解しているところでは、コンチネンタルRが高価である大きな理由は、その内外装です。11層以上とも言われる塗装をはじめ、厳選されたバーウォールナットをブックマッチと呼ばれる方法で左右対称にあしらったウッドパネル、世界最高とうたわれたコノリーレザーのシートやトリムなどが良い例です。一方で、機関系については性能と信頼性を冷静に判断し、必要に応じて外部のものを使用しています。トランスミッションはGM製、ハイドロリック・サスペンションは言わずと知れたシトロエン製です。また、96年のクルマとはいえ、当時の最高級車ですから、快適装備含む電装系などは驚くほど高性能です。したがって、機関系や電装系については、それほど大きな心配はないのではないかと考えていました。

クルマを預けた翌日、左フロントにあるウィンカーカバーが割れているとの連絡がありました。ウィンカーそのものではなく、エクステンションカバーというどちらかと言うとデザインパーツに近いものだったため、車検には影響しないかもしれないが念のため交換したほうがよいとのことでした。見た目も良くないので当然交換を依頼しましたが、問題は交換部品です。まず日本国内に在庫はないので本国から輸入するとのことでしたが、経験がないので時間と費用が掛かりそうだと正直にお伝え頂きました。私は希少車のオーナーとして、そうしたパーツの手配先はすでの目星をつけていましたので、英国にある専門店から直送してもらうことにしました。ちなみに、パーツ自体は¥6,000-程度でした。5日後、無事パーツは届きました。持ち込みパーツに対応してもらえるかどうかも、整備に出す際に重要なポイントです。

○届いた見積もり
4/10の夜に入庫して4/23に引き取りですから、2週間弱で初めての車検は終わりました。車によっては即日車検も行っている同店ですが、今回は手続き上の都合や、パーツが到着するまでのリードタイムなども含んでいるので、私としては時間的にも不満はありません。

整備内容についてですが、懸念していた機関系や電装系については、車検上はもちろん、あえて変えるほどの部分はありませんでした。特にタイヤにまったく問題がなかったことは嬉しい誤算でした。現在、ピレリのスコルピオン ゼロというタイヤを履いていますが、255/55/R17という一般的でないサイズのため費用を抑えることが難しく、20万円ほどは見込んでいたのでした。

エンジンオイルはバルボリンのレーシング SM 20W50を10リットル(¥12,940-)、バッテリーはボッシュ製のシルバーバッテリー SLX-7F(¥40,282-)を入れてもらいました。どちらもお店の方で適合を調べてもらい、推薦いただいたものです。そのほか、オイルフィルターやエンジンオイルドレンパッキン、発煙筒などを交換してもらいましたが、どれも数百円から数千円というレベルです。

車検整備費用一式と、自賠責保険、重量税および印紙代を含めた総額は¥231,259-となりました。自身で英国より取り寄せたパーツ代を足しても¥250,000-程度です。この金額が安いかどうかは人それぞれですが、私としてはとても満足しています。安く済ませるだけなら、オイルもバッテリーももっと安価なものはありますし、もっと言えばユーザー車検に出せば費用は抑えられますが、私はそれを望んでいるわけではありません。必要があればたとえ「3ケタ万円」でもなんとかして支払うつもりでしたが、今回はその必要はないとのことでしたので、浮いた費用でコーティングをしようと思っています。ちなみに、サービスでかんたんな洗車をしていただいたのですが、担当の方の「素晴らしいクルマなのでぜひ磨きたい」というセールストーク(?)にまんまとハマり、コーティングもその店でお願いすることにしました。

○ベントレーの車検は「3ケタ万円」かかるのか?
ここまで見て、今回の車検が結果的に満足度の高いものとなった理由は、まったくの偶然で運が良かったと思われるかもしれません。しかし、これはいくつかの視点から説明することができます。

まず、整備業界の構造という視点です。今回依頼した大手自動車用品店ですが、整備そのものは外注することが多く、私のクルマも恵比寿にある大手私鉄系の自動車整備工場で実際の整備が行われました。その前にいくつかの提携工場に依頼したそうですが、クルマがクルマなので断られてしまったようです。ただ、私の立場からすれば、大手自動車用品店が受け入れ可能な整備工場を探すのを代行してくれたということもできます。整備業界ではこうした再委託は一般的であり、私がコンチネンタルRを購入した専門店も、車検整備は委託することもあるそうです。言い換えれば、実際に誰が整備するかまではユーザーにとってはブラックボックスでもあるのです。となると、大手自動車用品店は、構造上大量のクルマを整備することによる「規模の経済」によって全体の利益を最適化しているため、1台のクルマに対して必要以上に利益を上乗せしたり、ましてやいい加減な整備をすることによって享受できるメリットが中小規模の店舗より大きく減ります。極端に言えば、たとえ赤字が出たとしても気持ちよく取引ができたほうが、少しの利益のためにクレームが発生して会社の看板に傷をつけてしまうよりも全体としてメリットがあるのです。

次に、クルマそのものに対するオーナーの知識と意欲という視点です。私はエンスージアストとしてベントレーを所有しているので、最低限必要な知識はあるつもりです。したがって、クルマの状態や必要な整備内容についてもある程度踏み込んで話をすることができる上、整備方針についても明確でした。その結果、整備をする側にも意図が伝わり、納得のゆく内容となったのだと思います。逆に言えば、知識もなく意欲もなければ、店舗に丸投げをするというスタンスになります。そうなると、経済合理性から言っても店舗側はできるだけ入念に整備をしようとするのは当然です。お金の最も有効な使いみちは時間を買うことだということは私も経営者として常に考えていることですので、それは悪いことではないと思っています。ベントレーに限らず、正規販売店に多くは、ワンストップのサービスを提供する代わりに、相対的に費用がかかるものです。ベントレーの場合、多忙な経営者というオーナーが実際のところ多いでしょうから、なおのことお金で時間を買いたいと思うのではないでしょうか。一方で、今回の私のように、パーツを自ら手配するなどすれば、費用は大きく削減することが可能です。誤解がないように付け加えておくと、今回、大手自動車用品店側にパーツを手配する能力があればおまかせするつもりでしたが、難しいとのことだったので私が手配することにしました。得意な人が得意なことをすればいいというのは、私の経営哲学の1つでもあります。

さて、お気付きの通り、ベントレーにおける「3ケタ万円」もの車検整備費用というのは、多くの場合、時間をお金で買っている場合が含まれていると思われます。すべてのベントレーオーナーが、自分の足で整備工場を探し自分の手でパーツを手配すれば、より安価に車検整備を行うことが可能なはずですが、そんなことをするよりは「3ケタ万円」払ってしまう方がメリットがあると考える方が多いのでしょう。しかし、それは「3ケタ万円」支払わなければならない、ということではありません。「ベントレーの車検には多くのお金がかかる」というのと「ベントレーの車検には多くのお金がかかることもある」というのでは、大きな違いがあります。

もちろん、かけようと思えばいくらでもかけることのできるクルマであることも事実です。例えば、エンジンをオーバーホールすれば簡単に「3ケタ万円」に届くでしょう。外装色のオールペイントや内装のウッドやレザーのフルリペア、あらゆるパーツを当時のままのものに仕立てようとすれば、4ケタ万円に達するかもしれません。しかし、そのどれもが「支払わなければならない」という性質のものではありませんし、ましてや他人に強要されるものではありません。

実際に支払うことができるという意味において、「ベントレーの車検には3ケタ万円かかる」というのは都市伝説ではありませんが、そうしたセンセーショナルな部分ばかりがひとり歩きしてしまい、間違ったイメージが伝わるのは健全ではありません。業界の知識、クルマの知識に加え、必要に応じて自ら手と足を動かせば、それなりの費用に抑えることが可能です。何より、最も大切なのは、信頼できるパートナーを見つけて、しっかりとしたコミュニケーションをとることでしょう。そうしたパートナーと出会えたことは、やはり幸運な偶然によるものだったのかもしれません。

(ピーコックブルー・瓜生 洋明)

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